スペシャルインタビュー

歴史文化と自然に恵まれた環境で、自治の精神に基づいた多様な学びを創る「松本市立丸ノ内中学校」

「松本」駅から車で5分ほど、市街地北部にある城山の中腹に佇むのが「松本市立丸ノ内中学校」だ。1948(昭和23)年に松本城二の丸に開校し、1952(昭和27)年に文部省のモデルスクールとして現在の場所に移転新築されたという歴史を持つ。今回は、2022(令和4)年度に「松本市立丸ノ内中学校」に着任された宮下昌史校長先生に、学校の特色や地域との連携についてお話をお聞きした。

「松本市立丸ノ内中学校」の宮下校長先生
「松本市立丸ノ内中学校」の宮下校長先生

創立時から受け継ぐ自治の精神を大切に、子どもたちが豊かに主体的に学ぶ

――「松本市立丸ノ内中学校」について、沿革や教育目標を教えてください。

宮下先生 「松本市立丸ノ内中学校」は、1948(昭和23)年に創設され、1952(昭和27)年に文部省指定建築モデルスクールに認定されました。当時はこのような急勾配の土地に学校を建てることが非常に難しい時代で、長野県を代表する建築会社がさまざまな技術を駆使して、ここに建てたそうです。

職員室や図書室などがある管理棟がその当時の建物で、屋根の上には自治の精神を表す「自治の鐘」があります。この建物と「自治の鐘」は、創立時から受け継いでいる本校のシンボルであり、文化的に価値のある建物とともに、現在まで大切に受け継いでいます。式服はありますが、制服がないことも本校の特徴であり、自治の精神の現れのひとつです。

丸ノ内中学校のシンボルでもある管理棟
丸ノ内中学校のシンボルでもある管理棟

2023(令和5)年4月現在、児童数は237名、学級数は1年生2クラス、2・3年生が3クラスずつの8クラスです。教育目標は「自治の精神 ー豊かな心でたくましく自他ともによりよく生きようー 律する心 磨く心 思いやる心」。本年度は「予測困難な未来を生きるために必要な力 ◇自立する力 ◇表現する力 ◇創造する力」という目標も掲げています。今年度(令和5年度)は「探究」をテーマに、「総合的な学習」の時間での学びを核にして、子どもたちが豊かに主体的に学ぶ学校づくりを行っていきます。

また、2023(令和5)年度は、本校が長野県のパイオニア校に指定されたことから、同じ学区にある小学校と連携し、小学校から中学校へと、探究というテーマで学びがつながっていくような学校づくりをしようと、新たな取り組みがスタートしました。「田川小学校」、「開智小学校」と本校の3校で連携し、探究授業を研究する予定です。さらに、近隣にある「長野県松本蟻ヶ崎高校」とも、連携した学びづくりを行っていきたいと話し合っているところです。

開放的な吹き抜けがある管理棟のホール
開放的な吹き抜けがある管理棟のホール

生徒たちの自主性・創造性を育む生徒会活動

宮下先生 生徒会活動においては役員の生徒たちがリーダーシップを発揮しています。「丸中(まるちゅう)ミーティング」という縦割りの小グループでの話し合いなどもやっていて、昨年度(令和4年度)のテーマは「丸中の自治って何?」でした。生徒会活動の意味や目的をしっかりと考えて、先輩たちの良いところは引き継ごうと、生徒たちは自らアイデアを出し、さまざまな活動に取り組んでいます。

また、生徒会では年度ごとに「大目標」を掲げています。例えば、2022(令和4)年度は「開(かい)」、2023(令和5)年度は「超越」といったように。年度を超えて受け継いでいるものとしては「昨日より“今日”、今日より“明日”」という目標があり、ここでも自治の精神を大切にした活動をしています。

学芸発表会(学校祭)でクラスごとに制作する学級旗(左)と合唱ポスターも、力作揃い
学芸発表会(学校祭)でクラスごとに制作する学級旗(左)と合唱ポスターも、力作揃い

「探究」をテーマに総合的な学びを

――「松本市立丸ノ内中学校」で大切にされているという「総合的な学び」について、お聞かせください。具体的にはどんな活動をされているのでしょうか。

宮下先生 2022(令和4)年度の3年生のあるクラスでは、「若者を松本に呼ぶためにはどうしたらよいか」というテーマのもと、グループに分かれてパンフレット制作を行いました。あるグループは、市内のカフェを紹介するパンフレットを作りました。実際に街に出かけていって、生徒たち自身がお店の方に掲載の交渉や取材をしたほか、印刷会社さんとやりとりするといったことも行いました。さまざまな職種の方と接する機会や、多様な社会貢献に携わる経験ができたので、非常に広がりのある学びになったのではないかと思います。まさに、これからの生徒たちに身につけていってほしい力が育まれる機会となりました。今後も、生徒たちの興味・関心や問いをきっかけに地域社会とつながり、地域の皆さんに探究の成果を還元できるような、総合的な学びの時間を大切にしていきたいと思っています。

3年生が総合的な学習の時間に制作した松本市のパンフレット
3年生が総合的な学習の時間に制作した松本市のパンフレット

生徒たちの姿が地域を明るく照らす

――地域住民の方との関わり・交流などもありましたら教えてください。

宮下先生 総合的な学習の時間には、地域のボランティアの方にもご協力をいただいていています。コーディネーター的な役割を担っていただいており、子どもたちは地域の方のアドバイスも受けながら学ぶことができています。

また、学校の前には創立以来「がんばり坂」と呼ばれている急坂があるんです。車でも「斜面がきついな」と感じるぐらいの坂で、そこを毎日行き来することは、生徒たちの体づくりにも一役買っていると思います。みんな元気に登ってきますので、そんな姿も地域の方の目には頼もしい姿に映っているのではないでしょうか。

「丸ノ内中学校の生徒たちの明るい挨拶がとてもいい」と、地域の皆さんをはじめ、いろいろな地域の方からおっしゃっていただいていて、日々、松本市民のみなさんに温かく見守っていただいているな、と感謝しています。

白い壁や天井に、磨き込まれた木の風合いが映える
白い壁や天井に、磨き込まれた木の風合いが映える

国宝が2つある、文化芸術の息づく「学都松本」

――「松本市立丸ノ内中学校」周辺の教育環境についてお聞かせください。

宮下先生 学区は「松本」駅周辺から、桜の名所である「城山公園」、自然豊かな「松本市アルプス公園」まで、多彩な景観を有しています。また、住宅地と商業地、観光地などが点在しており、それによって多様な学びができる地域であると思っています。

2022(令和4)年度は、総合的な学習の時間に、本校から車で5分ほどのところにある「松本市アルプス公園」をテーマに取り上げたグループがありました。公園での清掃活動などを経て、より魅力ある公園にするにはどうしたらいいか、という課題に取り組むなど、ただ単に地域の歴史を学ぶというだけではなくて、今ある私たちの環境をどのようにより良くしていこうかと、総合的に考える力が存分に生かされた取組だったと思っています。

校舎から松本市街地を望む
校舎から松本市街地を望む

――松本渚エリアで学ぶ魅力を教えてください。

宮下先生 「松本市美術館」や「松本市立博物館」など、歩いていける距離に博物館がいくつもありますし、「松本城」と「旧開智学校校舎」という国宝もあります。2つの国宝を有する学区として、さらに歴史文化に触れた豊かな学びができる環境にあることが、特筆すべきことであり、非常に魅力的だと思っています。

 

校長 宮下 昌史先生
校長 宮下 昌史先生

松本市立丸ノ内中学校

校長 宮下 昌史先生
所在地:長野県松本市宮渕3-6-1
電話番号:0263-32-1962
URL:https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/184/2269.html
※この情報は2023(令和5)年4月時点のものです。

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